離婚・男女問題
離婚
各種離婚手続の内容や違いについて教えてください。
協議離婚とは、夫婦が話し合いによって離婚するというものです。お互いの合意があれば、理由を問わず離婚することができます。
調停離婚とは、家庭裁判所の調停によって離婚するというものです。調停とは、裁判所において、調停委員会(裁判官及び調停委員)が当事者の間に入って調整を図り、当事者間の合意を成立させる制度です。調停委員会が間に入ることで、円滑な話し合いが期待でき、不当な内容の離婚を防ぐことが期待できますが、最終的には夫婦互いの合意が必要となります。
審判離婚とは、調停が成立しない場合に、調停申立の趣旨に反しない限度で、家事審判官(裁判官)の審判によって離婚するというものです。しかし、審判から2週間以内に異議を申し立てると効力を失うので、現実にはほとんど利用されていません。
裁判離婚とは、家庭裁判所の判決によって離婚するというものです。判決によって、夫婦互いの合意が無くとも離婚が成立しますが、離婚の訴えの提起は、調停が不成立ないしこれに準ずる取下げの場合に限り認められること、民法770条1項各号の離婚理由がなければ離婚が認められないこと等に注意が必要です。
和解離婚とは、訴訟(裁判)の中で、夫婦が互いに自らの主張を譲り合って合意を形成して離婚するというものです。離婚の訴えを提起した場合、和解離婚となるケースが多くあります。
親権
私は、現在、妻と離婚の話し合いをしていますが、5歳の子どもがおり、その親権についてお互いに譲りません。妻が、話し合いの中で、「子どもが小さいのだから、親権者には母親がなるのが当然である。」と言っています。もし、調停や裁判などで親権が争われた場合、やはり母親である妻が親権者と定められてしまうのでしょうか。
子どもの親権者を定める際には、個々の事案ごとに、父母の事情(経済力や居住環境、監護補助者による援助の有無、監護の継続性、子どもとの心理的な繋がりの程度など)や子どもの事情(子どもの環境、交遊関係、学校関係、子どもの意思など)を考慮して、父母のどちらを親権者と定めるのが子どもの健全な生育に適するかという観点から判断されます。したがいまして、必ずしも母親が親権者と定められるわけではありません。
私は、私の不倫が原因で夫と夫婦仲が悪くなったため、離婚を考えています。私には3歳の子どもがおり、子どもの親権者には私がなりたいと考えています。親権者を決めるに当たって、不倫をしていたという事実は不利になるのでしょうか。
不倫(不貞行為)は、夫婦関係を破綻させた原因ではありますが、そのことをもって直ちに親権者として不適格であるということではありません。あくまで子どもにとって父母のどちらを親権者と定めるのが子どもの健全な成長に適するかという観点から判断されます。
私は、妻と離婚し、親権者となった妻が子どもを連れて実家に戻りました。せめて月1回は子どもと会いたいのですが、妻は子どもに会わせてくれません。子どもと会うためにはどうすればよいでしょうか。
親権者でない親が子どもと会うことを面会交流(以前は面接交渉と呼ばれていました。)といいます。面会交流は、その性質については諸説ありますが、一般には、親権者でない親の権利として認められ、調停や審判の対象となります。面会交流は、明らかに子どもの健全な成長を妨げるおそれがない限り、認められるべきであると考えられています。したがいまして、親権者である親が子どもと会わせてくれない場合には、調停や審判を申し立て、面会交流の実現を図るべきです。
私は、夫と離婚し、私が6歳になる子どもの親権者になりました。しかし、夫は、子どもと会ったときに、子どもを連れ去ってしまい、子どもを返してくれません。すぐに子どもを返してほしいと思っていますが、どういう方法があるのでしょうか。
親権者は、子どもの監護教育権を持っており、子どもを虐待しているなど特別な事情がない限り、監護教育権を根拠として、子どもの引渡しを求めることができます。手続としては、調停及び審判があります。また、審判前の保全処分によって、審判がなされる前に、仮に子どもの引渡しが認められる場合もあります。
財産分与
私は、結婚後、専業主婦をしていましたが、夫との関係が悪くなったので、現在、夫と離婚について話し合いをしています。離婚後の生活を考え、結婚後に蓄えた貯蓄について財産分与を求めていますが、夫から「貯蓄は全部俺が稼いだお金だ。お前はずっと専業主婦だったから分与するとしても1割か2割だ。」と言われました。私としては、家事をして夫を支えていたつもりであるので、貯蓄の2分の1は分与してもらいたいと思っています。夫婦共働きの場合と妻が専業主婦の場合とで、財産分与の割合は異なるのでしょうか。
清算的財産分与における清算割合については、明確な基準はなく、夫婦それぞれの共同財産の形成・維持に対する貢献の程度によって判断されます。もっとも、現在の実務においては、特別な事情がない限り、夫婦共働きの場合か妻が専業主婦の場合かを問わず、清算割合は2分の1とされます。
私は、現在55歳の専業主婦であり、59歳の夫との離婚を考えています。年金を受給するまでの間、生活に不安があるので、離婚に際して、夫に対して財産分与を求めたいと考えています。しかし、私たち夫婦には特に財産はないので、夫が来年定年退職する際に支給される退職金の半分を分与してほしいと考えています。退職金は、財産分与の対象となるのでしょうか。
退職金は、賃金の後払い的な性格が強いので、実質的な婚姻期間(同居期間)に相応する部分は、夫婦が婚姻中に協力して形成した財産であるといえます。したがいまして、既に支払われた退職金のうち、実質的な婚姻期間に相応する部分は、財産分与の対象となります。
しかし、将来支払われる退職金については、退職時期や会社及び本人の事情、経済情勢などに左右されるので、必ずしも財産分与の対象となるわけではありません。もっとも、退職時期が近いなど、退職金が支給されることがほぼ確実な場合には、財産分与の対象と認められる場合が多いといえます。金額や支払方法については、離婚時点で退職すれば支給されるであろう金額を基準として離婚時に支払う、将来支給されたときに支払うなどの方法が考えられます。
私は、妻から300万円の預金について財産分与を求められています。しかし、住宅ローンの残額が1500万円で(住宅の名義は、私名義です。)、しかも住宅の評価額は800万円なので、いわゆるオーバーローン状態です。このような場合にも、財産分与請求権はあるのでしょうか。
夫婦共同財産に資産(積極財産)と債務(消極財産)とがある場合には、原則として、積極財産の総額から消極財産の総額を差し引いた残額が財産分与の対象となります。ご質問のケースですと、積極財産が1100万円、消極財産が1500万円と消極財産の額が上回っているので、原則として、財産分与の請求権は生じません。
ただし、実際の調停などの場では、住宅ローンが残っていても、住宅ローンの負担をどうするか等を考慮しつつ、財産分与が認められる場合もあります。
慰謝料
私は、夫が不倫をしたので、離婚をし、慰謝料を請求したいと考えています。慰謝料の金額はどのようにして決められるのでしょうか。
慰謝料の金額は、相手方の行為の有責性、婚姻期間、相手方の資力などを考慮して決められます。明確な基準といえるものはなく、個々の事案ごとに判断されることとなります。
私は、妻の不倫を理由に離婚調停をしましたが、不成立に終わりました。そこで、離婚訴訟を起こすとともに不倫の相手の男性にも慰謝料を請求する訴えを起こしたいと考えていますが、離婚訴訟とは全く別の訴訟として扱われるのでしょうか。
離婚請求と離婚の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求は一つの訴えですることができます。したがいまして、家庭裁判所に離婚訴訟を提起する際に、併せて不貞行為の相手方に対する損害賠償請求訴訟を提起することができます。
年金分割
私は、結婚後ずっと専業主婦をしていましたが、夫との離婚を考えています。夫婦間には特に財産もないので、老後が不安なのですが、離婚時年金分割制度というものがあると聞きました。離婚時年金分割制度とはどのようなものなのか教えてください。
離婚時年金分割制度とは、配偶者の厚生年金及び共済年金について保険料納付実績を分割し、分割を受けた第3号被保険者(第3号被保険者=厚生年金、共済年金の加入者の被扶養配偶者で、20歳以上60歳未満の者)に対し、分割後の保険料納付実績に基づいて算定された額の年金受給権が発生するという制度です。
種類としては、合意分割と3号分割の2種類があります。合意分割は、夫と妻が、年金を分割することとその分割割合について合意していれば、離婚時に、婚姻期間の保険料納付実績を合意によって定められた割合(最大50パーセント)で分割できるというものです。夫婦間の協議で合意が成立しない場合は、調停、審判によって按分割合を決めることとなります。
3号分割とは、夫婦の一方が、平成20年4月以降に、第3号被保険者であった期間がある場合に、厚生労働大臣等に対して請求することで、その期間(平成20年4月1日以降の部分に限られます。)の保険料納付実績の2分の1を当然に分割する制度です。
養育料
私は、夫と離婚協議中であり、子どもの親権者には私がなり、私が子どもを引き取ることで合意しましたが、養育料の額で折り合いがつきません。適正な養育料の額を知りたいのですが、養育料はどのようにして決められるのでしょうか。
養育料の支払義務は、子どもに対し、自分の生活を保持するのと同程度の生活を保持させる義務であり、父母双方の収入を基準に決められます。現在の調停・審判においては養育料算定のための表が活用されており、この算定表を目安に養育料を決めるケースが多いといえます。
現在、子どもが17歳の高校2年生であり、大学進学を希望しております。そこで、養育料を子どもの大学卒業まで支払ってほしいと考えておりますが、認められるのでしょうか。
養育料の支払いは、子どもが20歳になる日の属する月までとすることが一般的です。もっとも、父母双方の合意により、子どもが大学を卒業する月までとすることは可能です。問題は、話し合いで合意が成立せず、審判になった場合ですが、父母の経歴、経済状態や本人の学校成績、学校の進学実績などを考慮して、大学進学の可能性が相当程度高いといえる場合には、養育料の支払いは子どもが大学を卒業する月までと認められる可能性があります。
私は、妻と離婚後、子どもの養育料として毎月5万円を支払っていました。しかし、勤めていた会社が倒産してしまい、何とか再就職先を見つけましたが、給与は以前の半分以下になってしまいました。現状では毎月5万円の養育料の支払いでは生活ができない状況ですが、養育料を減額することはできるのでしょうか。
養育料の支払いは長期にわたるので、いったん養育料を定めたとしても、その後の経済情勢や支払義務者の事情の変化によって定められた額が実情に合わなくなることがあります。この場合には、養育料の増額、減額を求めることができます。ご質問のケースであれば、勤務先の倒産による転職で収入が激減したという事情の変化がありますので、減額についての協議、調停、審判をすることをお勧めします。
婚姻費用分担
私は、2年前に夫と別居しました。別居の際、夫から生活費として毎月3万円を受け取るという合意をしましたが、3か月前に勤務先を整理解雇されてしまい、なんとか新しい勤務先に就職できたものの、収入が以前より激減してしまいました。夫に対して生活費を増額するよう求めることを考えておりますが、一度決めた生活費の額を変更することは可能なのでしょうか。
いったん婚姻費用分担額(生活費)を定めたとしても、その後の経済情勢や支払権利者または支払義務者の事情の変化によって定められた額が実情に合わなくなることがあります。この場合には、婚姻費用の増額または減額を求めることができます。ご質問のケースですと、勤務先の解雇による転職で収入が激減したという事情の変化がありますので、夫との協議や調停または審判の申立てをすることで婚姻費用分担額の増額が認められる可能性があります。
私は、夫と別居して3年が経ちます。別居中、夫から全く生活費を受け取っていないので、婚姻費用分担の調停を申し立てようと考えています。調停においては、どの時点からどの時点までの婚姻費用の請求をすることができるのでしょうか。
調停においては、申立時を婚姻費用(生活費)支払いの始期とすることが通常ですので、原則として、申立時から離婚時または別居関係の解消時までの婚姻費用を請求することができます(なお、次のQ及び、その次のQを参照)。
私は、1年前に子どもを連れて夫と別居しました。夫との間で別居時に毎月7万円の生活費を支払ってもらう約束をしましたが、これまで一切生活費を受け取っていません。しかし、自分1人の収入では生活が苦しいので、夫に対し、別居してからの分も含めて生活費を請求したいと考えていますが、可能でしょうか。なお、離婚は考えていません。
別居開始時から請求時までの婚姻費用の未払い分(過去の婚姻費用の未払い分)は、相手方との間で合意が成立し、これを証明することができれば、請求は可能です。
私は、夫と2年前に別居していますが、関係の修復は不可能なので、離婚を決意しました。別居中、夫から生活費を全く受け取っていなかったので、夫に対し、未払いの生活費の支払いを求めたいと思いますが、可能でしょうか。
過去の婚姻費用の未払い分は、財産分与の際に考慮される事情となりますので、財産分与として、過去の婚姻費用相当額の分与が認められる場合があります。
私は、4年前に男性と浮気をして、子どもを連れて夫と別居しました。しかし、2年前に浮気相手の男性と別れてしまい、現在は、アルバイトで収入も少ない状況です。他方、夫は、私と別居後、事業に成功し、かなりの収入があるようです。子どものことを考え、夫に対し生活費の請求をしたいと考えていますが、別居の原因を作った私が生活費の請求をすることが出来るのでしょうか。
夫婦間に子がいる場合、婚姻費用(生活費)のなかには、子の養育料も含まれます。両親は、子に対し自分の生活を保持するのと同程度の生活を保持させる義務がありますし、そもそも子が夫婦間の別居に対する責任を負うことはないので、婚姻費用のうち、子の養育料相当分については、別居の原因が自分にあるとしても請求が認められると考えられます。
他方、配偶者自身の生活費については、婚姻費用の分担は夫婦の同居協力扶助義務(民法752条)と表裏一体の関係といえるので、不貞行為などがあり同居協力扶助義務に著しく反していることが明らかである(別居の原因につき一方的に責任があることが明らかである)場合には、婚姻費用のうち配偶者生活費分について、通常よりも減額されることが考えられます。他方、同居協力扶助義務に著しく反していることが明らかとまでいえない場合(別居の原因につき一方的に責任があることが明らかとまではいえない場合)には、通常の場合と同様の額の分担請求が認められると考えられます。
DV
私は、夫からの度重なる暴力に耐えかねています。夫から逃れて生活したいと考えていますが、具体的にどうすればよいのでしょうか。
まずは、配偶者暴力相談支援センター(地域によって名称は異なります。)や警察署に相談すべきです。配偶者暴力相談支援センターでは、自立支援やシェルターの利用などの情報提供や一時保護等の援助を、警察署では、緊急性の高い場合には、一時保護などの措置をとってもらうことなどができます。そのうえで、DV加害者から避難をするのがよいでしょう。
また、DV加害者から被害者を保護する手段として、いわゆるDV防止法に基づく保護命令の申立てがあります。保護命令には、被害者本人への接近禁止、被害者への電話等禁止、被害者の同居の子への接近禁止、被害者の親族等への接近禁止、退去命令の5つがあります。保護命令に違反した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金という刑罰に処せられます。
私は、夫のDVから避けるために別居しました。夫とは一刻も早く離婚をしたいのですが、どのように離婚手続を進めていけばよいのでしょうか。
協議離婚が成立する見通しがないので、調停申立てまたは訴訟提起によって離婚手続を進めていくことになります。もっとも、調停申立てや訴訟提起により、DV加害者からの暴力などがひどくなる傾向があるので、代理人弁護士に依頼しなければ手続を進めていくことは極めて困難であるといえます。代理人弁護士に依頼した場合には、DV加害者との連絡は代理人弁護士が行いますし、裁判所との折衝により、調停や裁判の期日においてDV加害者と直接接触しないよう配慮することが可能になります。